「もう、こんくらいでいいかなぁ」
蒸し器を見ながらお母さんとお話してたらね、なんとなくだけどこれくらい蒸したらいいんじゃないかなぁって思ったんだ。
だからお母さんに頼んで、蒸し器をお鍋からおろしてもらったんだよ。
「ルディーン。これにさっき炒って潰した小麦の入っているボウルに移せばいいの?」
「ちょっと待って。そのまんまだと熱すぎるから、ちょっと冷まさないとダメかも」
蒸しあがったばっかりの大豆って、すっごくあっついでしょ?
だったらさ、発酵させようと思っても中に入った菌がみんな死んじゃうかもしれないもん。
だからちょっと冷まさないとダメじゃないかって、僕、思うんだ。
「そう。それなら今度は、ふたを取ってしばらく置いておくのね?」
「ううん。それだと時間がかかっちゃうから、魔法で冷やすよ」
「あら、そんな事ができるの?」
「う〜ん。やった事無いけど、多分大丈夫」
僕ね、実はあっつい物を冷やす魔法なんて持ってないんだ。
でも、別の魔法を使えば大豆を早く冷やせると思うんだよね。
「そう。ならお願いね」
「うん!」
僕はお母さんにそうお返事するとね、テーブルの上にのっけてもらった蒸し器に向かって魔法をかけたんだ。
どんな魔法かって言うとね、それはクールの魔法なんだよ。
クールの魔法はね、指定した範囲の温度を下げる魔法なんだ。
これを使えば蒸し器を冷蔵庫の中に炒れたのとおんなじ事になるでしょ?
それにこの魔法、蒸したばっかりの大豆の近くにある空気があっつくなっちゃっても、すぐに周りとおんなじ温度になっちゃうもん。
だから普通に冷蔵庫の中に炒れるよりも、もっと早く冷めると思うんだよね。
「お母さん、おっきなおさじとって」
「いいけど、何に使うの?」
「あのね、このまんまほっといてもいいけど、かき混ぜた方が早くつべたくなると思うんだ」
それにね、蒸した大豆をかき混ぜてあげれば、つべたい空気にいっぱいあ樽から早く冷めるでしょ?
だからぼく、うんしょうんしょって一生懸命大豆をかき混ぜたんだ。
そしたらさっきまですっごく熱かった大豆が、あっと言う間につべたくなっちゃった。
「お母さん。大豆がつべたくなったから、小麦のボウルに入れて」
「ええ、いいわよ」
お母さんはね、つべたくなった大豆を小麦の入ってるボウルの中にドバドバって入れてったんだよ。
あの大豆、蒸したからすっごく重たくなってるのにすごいなぁ。
そんな事を思いながら見てたんだけど、そしたら大豆を入れ終わったお母さんがボウルの中に手を突っ込んでかき混ぜ始めたもんだから、僕、すっごくびっくりしたんだ。
「お母さん、何にも言ってないのに、何でかき混ぜないとダメって解ったの?」
「ふふふっ、いつもルディーンが食べてるお料理もね、煮炊きする時には味がなじむようにかき混ぜながら作るからよ」
お母さんはね、僕がさっき大豆を小麦を一緒に発酵させるって言ってたのを聞いて、普段お家でお料理を作ってるのとおんなじようにするんだねって思ったんだって。
だから僕がかき混ぜてって言う前にやってくれたんだってさ。
「そっか。全部混ざったら僕の前に置いてね。次は発酵ってのをするから」
「ええ、解ったわ」
お母さんは両手で何度かボウルの中をかき混ぜるとね、そのボウルを僕の前に置いてくれたんだよ。
「それじゃあ、発酵をかけるね」
確か、麹菌ってので発酵させるんだったよなぁ。
そう思った僕は、麹菌で発酵しろ! って強く思いながら大豆と小麦が混ざったのに発酵を使ったんだ。
そしたらさ、
「ルディーン! これ、hジョン等に大丈夫なの? なんか白い糸っぽいものがいっぱい出て来たけど」
大豆と小麦に白いカビみたいなものがいっぱい浮かんできたもんだから、それを見たお母さんはすっごくびっくりしちゃんたんだよ。
僕ね、こういうのがいっぱい出てくる事を知ってたからあんまりびっくりしなかったんだけど、お母さんがすっごく心配そうに聞いてくるもんだからちょっぴり不安になってきたんだ。
「多分大丈夫だと思うんだけど……とりあえず一度やめて、鑑定解析で見てみるね」
「ええ。絶対その方がいいと、お母さんも思うわよ」
って事で完成解析。
そしたらさ、麹菌が全体に回って発酵は進んでるんだけど、ちょっと温度が上がってきてるって出たんだよね。
僕、それを見て思い出したんだ。
「そうだ! 発酵させる時は、かき混ぜないとダメなんだった」
「えっ? じゃあ、このカビみたいなのが出て来たのは、やっぱり失敗だったの?」
「違うよ。これはあってるんだけど、このまんまだとあっつくなりすぎちゃうから、かき混ぜながらやんないとダメなこと忘れてたんだ」
でも僕、スキルで発酵させないとダメだから、大豆と小麦をかき混ぜるなんてできないでしょ?
だからお母さんに混ぜてって頼んで、そのまんま発酵スキルを使い続けたんだよ。
そしたらだんだん大豆と小麦が全部白っぽくなってって、無事しょうゆ麹ってのが出来上がったんだ。
「次はこれにお塩を溶かしたお水を入れるんだ」
「塩水を入れるのね。それで、どれくらいの濃さにすればいいの?」
「えっとね、すっごく濃いのを入れるんだよ」
って事で今度は塩水作り。
とは言っても、さっき大豆を蒸すのに使った、ちょっと冷めちゃったお鍋のお湯の中にお塩を入れて作るだけなんだけどね。
「溶け切らない塩が底に少したまってるけど、これでいいの?」
「うん。多分大丈夫だと思うよ」
オヒルナンデスヨでやってた時はね、お水が真っ白になるまでお塩を入れてたもん。
って事はさ、これくらいいっぱい入れたって大丈夫だと思うんだよね。
「それじゃあこれも、クールの魔法で冷やしてっと」
もうあんまりあっ着く無いから大丈夫だと思うけど、お水の温度までオヒルナンデスヨで教えてくれなかったから、とりあえず普通のお水をおんなじくらいまで冷やしたんだよ。
でね、おっきめのかめの中に発酵させた大豆と小麦を入れて、その上からその塩水をドバドバかけてったんだ。
「えっと、ルディーン。もしかして、これで完成なの?」
「そんな訳ないじゃないか! これをもういっぺん発酵させないとダメだし、それが終わったら今度はお酒みたいに搾らないとダメって、さっき言ったでしょ?」
「ああ、そう言えばそう言っていたわね」
お母さんはそう言うとね、材料を入れたかめを覗き込んだんだよ。
そしたら何かに気が付いたようなお顔になって、僕にこう言ったんだ。
「ねぇ、ルディーン。これって本当に、今すぐ発酵っていうのをしてもいいのかしら?」
「なんで? 何でそんな風に思ったの?」
「それはね、ルディーンがさっき大豆と小麦を発酵させた時は、私が其の前にしっかりと混ぜたからよ」
お母さんはね、このまんま発酵させてもうまく行かないんじゃないかなぁって言うんだよ。
「このまんまじゃダメなの?」
「ええ。大豆と小麦はしっかりとかき混ぜれば、すぐに次の工程に行っても大丈夫だと思うわよ。でも、今度はそれに塩水をくわえたもの」
大豆や小麦は、お塩と違ってお水に溶けないでしょ?
だからお母さんは、お水が大豆や小麦にしっかりとしみ込むまで発酵はしない方がいいんじゃないかなぁって言うんだよね。
「そっか。ちゃんと混ざってないと、発酵もうまく行かないかも」
「そうでしょ? 確かお酒も仕込んでから出来上がるまでかなりの時間がかかると聞いた事があるもの。これも多分同じで、本当ならきちんと塩水がしみ込むながら、徐々にぞの醤油ってのに変わっていくんじゃないかしら?」
僕、スキルを使えば醤油なんてあっという間にできちゃうって思ってたんだよ?
でも、ほんとだったらすっごく長い時間をかけて作るはずだもん。
お母さんの言う通りこのまんまちょっと置いといて、ちゃんと塩水がしみ込んでから発行した方がいいって僕も思うんだ。
「うん、わかった! ちゃんと塩水がしみ込むまで、このまんま置いとくね」
「ええ、お母さんもその方がいいと思うわ。大豆は蒸してあるし、小麦も炒って砕いてあるもの。このまま一晩おいて、明日になれば次の工程に移っても大丈夫だと思うわよ」
お母さんの言う通り、大豆も小麦も粒のまんまの時よりお水がしみ込みやすくなってるもん。
このまんま付け込んどけば、明日には木っとチャンとしみ込んでるよね。
「それじゃあ、続きはまた明日やろうね」
「ええ、そうしましょう」
そんな訳で醤油づくりの続きは、また明日ねって事になったんだ。
読んで頂いてありがとうございます。
麹菌で発行した大豆、実際に見ると本当にカビが生えて腐っているんじゃないかって思うような見た目なんですよね。
私も初めてテレビで見た時はちょっとびっくりしました。
そんなものを目の前で見せられたら、シーラー母さんが失敗したんじゃないかと考えるのは当たり前ですよね。
さて、先週は出張がありませんでしたが、残念ながら今週はあるんですよね。
なのですみませんが次の金曜日はお休みさせていただき、次の更新は来週の月曜日となります。